第3章 外国人住民の世帯・世代ごとの姿と地域でのつながり 【調査概要】 〇調査件名 横浜市中区委託「令和2年度中区外国人意識調査業務」 〇調査期間2020年10月から12月まで 〇調査方法・サンプル数 中区在住・在勤の外国につながる方を中心に、計24名へのヒアリング調査 〇国・地域別分類13か国(中国・台湾(計9名)、その他アジア( 7か国、計11名欧米その他(4か国、計4名)) 【凡例】社会資源とのつながりの傾向を以下の3つで示す。 ・全体的につながりはあまり見られない ・つながりは見られるが限定的/人による ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 【主旨】 横浜にはさまざまな経緯や状況のもと外国籍の方々が住んでいます。ここでは、インタビューに応じてくれた方々の生活・仕事・学び・つながりなどの実情や心情を世帯構成別に5つ のモデルにまとめました。 ※これは中区の一部の外国人を対象にした調査です。 A. 子どもがいる世帯 (子:外国につながる若者) 10~20代   父母【本人】 近隣住民と【本人】 →マンション近隣住民との関係は希薄。 ・全体的につながりはあまり見られない 職場・上司や同僚と【本人】 →アルバイト先でのつながりは希薄。多文化共生に関わる職場の場合、つながりが強い。 ・全体的につながりはあまり見られない ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 学校・同級生と【本人】 →公立学校のサポート体制は充実。外国人の同級生とは親しいが、日本人の同級生との関係は希薄。進学を機に、自身で努力してコミュニティを広げるケースあり。 ・全体的につながりはあまり見られない ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 自治会・町内会等の地域コミュニティと【本人】 →自治会等には所属してないが、仕事を通して活動に参加し、関心が高まるケースあり。 ・つながりは見られるが限定的/人による 同胞ネットワーク・コミュニティと【本人】 →出身国に関わらず、同じ境遇にある子どもたちとのつながりが強い。 ・つながりは見られるが限定的/人による 役所等の公共施設サービスと【本人】 →区役所の手続きは家族が行う。公共施設を自分たちの活動で積極的に活用しているケースあり。 ・つながりは見られるが限定的/人による B. 単身世帯 20代   【本人】 近隣住民と【本人】 →賃貸マンション・アパートでは近隣住民とのつながり希薄。大家とのつながりが1件あり。 ・全体的につながりはあまり見られない 職場・上司や同僚と【本人】 →就労先の上司や同僚からのサポートあり。休日一緒に外出のケースあり。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 自治会・町内会等の地域コミュニティと【本人】 →ほとんど接点なし。 ・全体的につながりはあまり見られない 同胞ネットワーク・コミュニティと【本人】 →日本語を話す環境下で、職場、日本人との付き合いがある一方、数の少ない同国出身者との直接の付き合いは少なめ。 ・つながりは見られるが限定的/人による インターネットの検索サービスやSNSコミュニティと【本人】 →SNS上に所属組織の仲間とのコミュニティ、同国出身のコミュニティあり。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 役所等の公共施設サービスと【本人】 →役所に母語で問い合わせる方法を把握。公共施設を利用するケースあり。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 C.  夫婦世帯 30~70代  【夫または妻】 近隣住民と【夫または妻】 →同郷出身で、同じ立場はつながりやすい。日本人とは挨拶程度だが、料理のおすそ分けをする関係もあり。 ・つながりは見られるが限定的/人による 職場・上司や同僚と【夫または妻】 →職場の同僚は日本人。職場内では会話あり。勤務時間外はつながりなし。 ・つながりは見られるが限定的/人による 学校や保育園・幼稚園・保護者と【夫または妻】 →孫の世話では、保育園の先生との関係はあるが、保護者との関係は希薄。他2世帯は子がいないため、つながりなし。 ・全体的につながりはあまり見られない ・つながりは見られるが限定的/人による 自治会・町内会等の地域コミュニティと【夫または妻】 →存在は知っているが、加入なし。 ・全体的につながりはあまり見られない 同胞ネットワーク・コミュニティと【夫または妻】 →SNSの同郷コミュニティでつながりあり。母国の人が集まる教会コミュニティあり。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 インターネットの検索サービスやSNSコミュニティと【夫または妻】 →SNSグループでの相談やインターネットでの情報収集。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 役所等の公共施設サービスと【夫または妻】 →手続きで区役所に出向くケースあり。公共施設の利用機会は少ない。 ・つながりは見られるが限定的/人による D. 子どもがいる世帯(母)20~40代  夫【妻】子 近隣住民と【妻】 →一軒家では比較的近所付き合いあり。マンションでは関係が希薄な傾向。 ・全体的につながりはあまり見られない 職場・上司や同僚と【妻】 →本人・配偶者が就労している場合、同僚や上司から情報を入手。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 学校や保育園・幼稚園・保護者と【妻】 →学校とのつながりは少なく、保護者間の関係も限定的、不安定なケースが散見。 ・つながりは見られるが限定的/人による 自治会・町内会等の地域コミュニティと【妻】 →自治会・町内会、子ども会からの勧誘なし。存在も認識なし。 ・全体的につながりはあまり見られない 同胞ネットワーク・コミュニティと【妻】 →対面より、ネット上の緩やかなつながりが多い。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 インターネット検索サービスやSNSコミュニティと【妻】 →検索サイトの活用あり。SNSの同郷コミュニティ等でつながっているケースも複数あり。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 役所等の公共施設サービスと【妻】 →困りごとは区役所等に相談。評価も高い。役所以外の公共施設の情報を把握しているケースは少ない。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 E. 子どもがいる世帯(父)30~40代  【夫】妻 子 近隣住民と【夫】 →近隣住民とは一定の距離を置く場合が多い。持ち家では付き合う傾向あり。 ・つながりは見られるが限定的/人による 職場・上司や同僚と【夫】 →職場でのつながり大。職場により、日本人の同僚の有無が異なる。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 学校や保育園・幼稚園・保護者と【夫】 →言葉の壁あり。母親が主に子育て。父親は教育方針や学校決定に関与するが学校行事への参加は少ない。 ・全体的につながりはあまり見られない 自治会・町内会等の地域コミュニティと【夫】 →勤務先の地域活動への参加あり。自宅のある自治会等の情報なし。 ・全体的につながりはあまり見られない 同胞ネットワーク・コミュニティと【夫】 →滞日人口が多い国の場合、同郷コミュニティを頼るケースあり。滞日人口が少ない場合は、緩やかにつながる程度。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 インターネットの検索サービスやSNSコミュニティと【夫】 →SNSに母国コミュニティあり、情報交換。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 役所等の公共施設サービスと【夫】 →行政サービスは頻繁に利用。窓口通訳やタブレット対応についても把握。 ・つながりは比較的しっかり/つながりがある人が大半 【調査分析概要】 〖1 近隣住民・地域コミュニティ〗 ・いずれの世帯においても、外国人は「近隣住民や地域コミュニティとのつながりが薄い。」 〖2 学校・保護者・同級生〗 ・子どもに対しては学校からのサポートはあるものの、「学校と保護者との間や保護者間では、言葉の壁によりつながりに不安」がある。また、「子ども同士では日本人と外国人の間での つながりが薄い。」 〖3 役所等の公共施設・サービス〗 ・「区役所について頻繁に利用」するケースが多い。公共施設の利用は世帯によってまちまち。 〖4 同胞ネットワーク・コミュニティ〗 ・「同郷のネットワークが形成」されており、そのコミュニケーション手段として「SNS等を活用」している。 〖5 職場・上司や同僚〗 ・学生アルバイトでは対人関係が希薄であるが、「常勤先では会話もあり、情報を入手」している。   【世帯ごとの特徴】 A. 子どもがいる世帯(子:外国につながる若者)10~20代 ・日本育ちの若者は、「日本語習熟度は高い」が、学校やアルバイト先で「言語や文化の壁」を感じ、差別的経験をしたり、「言葉の壁で何もできず挑戦できなかった」という声もある。 ・「なかラウンジに通う若者は、自らの経験をもとに外国につながる子への支援意欲」がある。 B. 単身世帯 20代 ・来日前後から日本語を学び、「言葉の壁は少ない」ものの敬語の理解は難しい。 ・外国人と地域の架け橋となる人もいて、「双方の課題を客観的に把握」している。 ・「日本語学習や会話、交流のニーズ」がある。「生活満足度が高く、将来も日本在住を希望」している。 C. 夫婦世帯 30代~70代 ・子ども家族の生活サポートで来日した親(いずれ帰国予定)の日本での「生活満足度は高い。」 ・地域活動に参加していない世帯では、家族内で情報を共有したり相談したりしている。 ・「職場の日本人とは交流があるが、言語の壁で日常の話し相手がなく寂しい思い」もする。「日本語の習得意欲は高い。」 ・「日本語教室が交流の場」となり、友人ができるなど生活の楽しみとなっている。 D. 子どもがいる世帯(母)20~40代 ・日本語の理解が生活に影響している。「日本語学習や就労の意欲は高い。子どもへの日本語教育」にも努めている。 ・「幼稚園や学校における母親の役割負担が大きい」と感じている。「外国出身者どうしの情報交換が多い。」 ・自治会やPTA活動は壁が高いが、近隣の誘いなどにより参加し世界が広がったという声もある。 ・子どもの成長後、ボランティアやサークル活動に参加する人もいる。その際、文化の違いを経験した人もいる。 E. 子どもがいる世帯(父)30~40代 ・自らの意思により来日。「言葉の壁などで苦労している子どもに悪いことをしたと感じている」人もいる。 ・「仕事が忙しく日本語学校に通えなかったり、同郷が多い職場では日本語の使用機会が少ない。」 ・日本に愛着を持つ「長期生活希望者が多い。在留資格の変更や住宅の購入、店舗の経営に対する制度などに苦労」している。 ●こうした方々や周囲の方々を支え、一人ひとりが生き生きと持てる力を発揮できるよう、YOKEはその役割を果たしていきます。